気持ちが落ち込んで辛い
こんな症状はありませんか?
仕事や勉強、人間関係、健康問題など……、悩みの内容は異なりますが、多くの人が何らかの悩みを抱えています。不安や心配は生きていく上で避けることができないものであり、気持ちの落ち込みは、誰にでも起こる自然な感情です。
日々の出来事による一時的なメンタル不調は、休養を取ったり、気分転換したりすることで徐々に気分が良くなり、元の状態に戻ることができます。しかし、時間が経過しても気分が回復せず、心身共につらい状態が続く場合は、何らかの病気の可能性もあるため、精神科や心療内科への受診をおすすめします。
“一時的な気分の落ち込み”と”病気によるうつ状態”を区別することは難しく、周囲の理解を得られずつらい思いをしている方も少なくありません。心の状態が不安定になり、一日中強い憂鬱感が続くような場合は、一人で抱え込まず、早期に診察を受けることが大切です。
うつ症状セルフチェック
以下のような項目に複数当てはまる場合には、放置せずに受診されることをおすすめします。
- 憂鬱な気分が2週間以上続いている
- 寂しさや悲しさを感じる、不安感・焦燥感が強くイライラする
- 人に会いたくない
- 心配事が頭から離れず、考えが堂々めぐりする
- 以前楽しめたことに興味が持てなくなった
- 疲労感が強く、何もやる気が出ない
- 理由もなく涙が出る
- 眠れない、または寝過ぎてしまう
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまうのをやめられない
- 自分は何をやっても上手くいかないと感じる
- 死にたい、消えてしまいたいと思うことがある。
気分が落ち込むおもな原因
気分の落ち込みは、以下のようなさまざまな原因で起こることがあります。
ご本人が原因を特定できる場合もあれば、理由が分からずに抑うつ状態を生じる場合もあり、複数の要因が積み重なって生じているケースもあります。
精神的・身体的なストレス
仕事上のミスなどの失敗体験や挫折、過重労働・長時間の残業による疲労、受験や勉強についていけないなどの強いプレッシャー、いじめやハラスメントなどの人間関係の悩みが原因で気持ちが落ち込む。近年、SNSによる他人との比較や誹謗中傷により、精神的なストレスを感じるケースも増加している。
環境の変化(ライフイベント)
進学、転校、就職、転職、引っ越し、結婚、離婚、妊娠・出産、育児、介護など、つらい出来事はもちろん、嬉しい出来事であっても環境が大きく変化することが気持ちが落ち込む原因になる。
ホルモンバランスの乱れ
女性の場合、月経前後や妊娠・出産、更年期などに見られるホルモンの変動により、気持ちの落ち込みを生じることがある。更年期の症状は女性だけでなく、男性にも生じることがある。
睡眠不足
不眠または睡眠の質の低下によって睡眠不足になり、体調が悪化することで気持ちが落ち込みやすくなる。不眠状態を繰り返すことでさらに気分が落ち込む悪循環に陥る場合もある。
精神疾患または身体疾患
何らかの精神疾患または身体疾患によって、気分の変動が起こることがある。
病気そのものが気分の落ち込みを引き起こすことがあるほか、治療薬の影響で気持ちの落ち込みを生じる場合や身体的な痛みなどで気持ちが落ち込むこともある。
天候(寒暖差・気圧の変化・日照時間の減少など)
季節の変わり目は寒暖差や気圧の変化が大きいため、自律神経が乱れやすくなり、倦怠感や疲労感、めまいなどとともに気持ちが落ち込むことがある。また、冬場に日照時間が短くなることで気持ちの落ち込みを生じることもある。
気持ちの落ち込みを招く主な疾患
以下のような疾患により、気分の落ち込みを生じることがあります。
適応障害
人間関係や環境の変化など、何らかの特定の出来事がきっかけになり、抑うつや不安、不眠などを生じる疾患。発症のきっかけとなったストレスがなくなると、6か月以内に速やかに症状が消失するが、ストレスが長引くと症状が慢性化し、うつ病などを発症することもある。
うつ病
精神的・身体的なストレスなどをきっかけに脳の機能バランスが崩れ、活動エネルギーが失われる疾患。気持ちが落ち込み、やる気や集中力が低下して無気力な状態が続くのが特徴。発症のきっかけとなったストレスが消失しても症状はなくならず、進行するにつれて、食事や入浴、着替えなどの日常生活の基本的な行動も難しくなる。
持続性抑うつ障害
うつ病に比べると軽い抑うつ状態が慢性的に2年以上続く状態。以前は「気分変調症」と呼ばれていたもので、うつうつとした気分が一日中続き、意欲の低下や集中力の低下、自信の喪失、不眠や食欲の減退などの症状を伴う。
不安障害
過度な不安感や緊張が続き、日常生活に支障をきたす疾患。気持ちの落ち込みや不眠、食欲不振などを伴うことが多い。不安障害には、以下のようなタイプがある。
全般性不安障害(GAD)
日常生活のさまざまな出来事に対し、漠然とした不安感や心配が続く。
社交不安障害
他人の目が過度に気になり、人前に出ることや他人との交流に強い不安を感じる。
パニック障害
場所や時間に関係なく、動悸、胸の痛み、息苦しさ、めまい、吐き気などのパニック発作を生じ、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖に襲われる。
広場恐怖症
公共交通機関・人混みなど、逃げるのが難しい場所や助けを求めにくい環境に強い恐怖や不安を生じる。
睡眠障害
寝付けない、寝てもすぐに目が覚めてしまう、熟睡できないといった睡眠不足または睡眠の質の低下が続く状態。日中に強い眠気を生じ、集中力が低下することで仕事や勉強の効率が下がり、気持ちの落ち込みや意欲の喪失を伴う。
双極性障害
気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返し現れる疾患。個人差もあるが、数か月から数年の間隔で症状が入れ替わる。躁状態・軽躁状態ではハイテンションで活動的になる反面、うつ状態になると気分が落ち込み、不眠、倦怠感、食欲不振などを伴う。
摂食障害
体重や体型に強くこだわり、食事の量や食べ方などの食行動に異常が見られ、身体的な健康や日常生活に支障をきたす状態。食べ物が全く食べられなくなる「神経性無食欲症(拒食症)」や自制を失って食べ過ぎてしまう「神経性過食症」など、いくつかの種類がある。自分の食行動がコントロールできず、過食や嘔吐を繰り返すことに対して怒りや不安、気持ちの落ち込みを伴う。
認知症
脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能が低下する疾患。もの忘れが増えることで、精神的に落ち込み、混乱を生じやすくなる。同じく、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」でも、集中力の低下や気持ちの落ち込みが見られることがある。
生理前気分不快症候群(PMDD)
月経が始まる2週間前くらいから、心の状態が不安定になり、日常生活に支障をきたす状態。
気持ちの落ち込み、不安、緊張、情緒不安定、怒り、イライラ、不眠、意欲や集中力の低下などを生じるが、月経開始後数日から症状が徐々に軽快・消失する。
更年期障害
閉経前後の約10年間である更年期(45歳~55歳頃)は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少してホルモンバランスが乱れやすくなる。肩こり、頭痛、腰痛、不眠、イライラ、気持ちの落ち込みなど、さまざまな不調を生じて日常生活に支障をきたすことがある。
当院での診療内容
当院では、最初に問診を行い、症状の経過や生活習慣を詳しくお伺いします。
その後、心理検査や血液検査などを実施し、身体的・精神的要因を総合的に評価した上で、それぞれの患者様の状態に合わせた治療を行います。
なお、問診や検査の結果、何らかの身体的な疾患の可能性があり、専門的な検査や治療が必要と考えられる場合は、昭和大学横浜市北部病院などの提携病院を紹介いたします。
生活習慣の改善
睡眠や食生活の乱れは、自律神経に影響を及ぼす上、意欲や幸福感を高める脳内物質であるセロトニン、アドレナリン、ドーパミンの分泌も低下させるため、生活習慣全般の見直しを行います。
食事
栄養バランスの良い食事が大切です。特に、糖質は血糖値の乱高下を招き、気持ちの落ち込みを悪化させてしまうため、炭水化物や甘いものの取り過ぎには注意が必要です。また、エネルギーの源になるたんぱく質をしっかり摂ることを心がけましょう。
ただし、気分が落ち込んで食欲がない時は、まずご自身が好きなものを食べてみるのもおすすめです。食事を美味しいと感じることが、気分を変えるきっかけになることもあります。
運動
適度な運動は、血流を改善し、心の状態を上向きにする効果が期待できます。
ストレッチ、ヨガ、水泳など、ご自身のペースで気持ちよく体を動かせる運動がおすすめです。
ウォーキングなどの有酸素運動は、脳を活性化するだけでなく、外出することで気分をリフレッシュする効果も期待できるため、継続して行うことをおすすめします。
睡眠
気分が落ち込んでいる時は、体のエネルギーが不足しているため、十分な睡眠で体力を回復させることが大切です。夜更かしは避け、寝る時間と起きる時間を一定にして睡眠のリズムを整えるとともに、寝室はなるべく暗くし、心地良い温度を保つなど、寝室の環境も整えましょう。
また、電子機器のブルーライトは交感神経を興奮させて睡眠を妨げる可能性があります。就寝2時間前にはパソコンやスマートフォンの操作を控えましょう。
一般的に成人の理想的な睡眠は6~8時間とされていますが、個人差もあるため、睡眠時間だけにこだわらず、翌朝すっきり目覚められる質の良い睡眠を目指しましょう。
心理療法(カウンセリング)
カウンセリングを通じて、患者さんを取り巻く状況を整理します。
ご自身が抱えている思いを開放することで、つらい気持ちを和らげる効果が期待できます。
また、ネガティブな物事の捉え方や思考パターンに気付き、修正することで、気持ちを前向きにする効果も期待できます。
当院では臨床心理士・公認心理師が、患者さん一人ひとりの状態に応じたカウンセリング・治療を行います。
カウンセリングの料金など詳細については、以下のページをご覧ください。
薬物療法
患者さんの疾患・症状に合わせて以下のような薬を処方します。
使用する薬の種類や量は医師の判断のもと、必要最小限の使用に抑えます。
抗うつ剤
うつ病または心理的なストレスによるうつ症状が強い場合。気分の落ち込みを改善し、意欲を高める効果が期待できる。
抗不安薬
不安や恐怖を伴う場合。強い不安感や緊張感を和らげる効果が期待できる。
抗精神病薬
重度の不安症状がある場合。広場恐怖症などの強い不安症状を和らげる効果が期待できる。
睡眠薬
睡眠不足による症状がある場合。不眠や睡眠リズムの乱れを改善し、睡眠の質を高める効果が期待できる。
気分を落ちこんだ時の対処法
ストレスの多い現代、気分の落ち込みを完全に防ぐことは難しいですが、普段から以下のような方法を心がけることで、気持ちの落ち込みを和らげる効果が期待できます。
誰かに相談する
話を聞いてもらうことで心が楽になるだけでなく、自分の状況や考えを客観的に見られるようになり、気持ちが立て直しやすくなります。相談相手は、信頼できる家族や友人でも良いですし、距離があった方が話しやすいという場合は、専門のカウンセラーに相談するのもおすすめです。
コーピングリストを作成する
ストレスの原因(ストレッサー)への対処法を、コーピングもしくは、ストレス・コーピングといいます。ご自身の中で、ストレスを感じた時に行う対処法(コーピング)をあらかじめリストアップしておき、気分が落ち込んだ時にその中の方法を実行することで、意識的に気分を変えるようにしましょう。
選択肢を増やすため、コーピングの内容は、思考法から行動までできるだけたくさんリストアップしておきましょう。小さなことや手軽に試せる簡単なものでも大丈夫です。ご自身の心が楽になるもの、リラックスできて心地よいと感じることが重要で、時間やお金がかかりすぎるもの、健康や人間関係に悪影響を及ぼすものは避けましょう。
一つの方法を実行して効果がなくても深く考えず、他の方法を試しましょう。いくつかの方法を試すうちに、気分が回復してくる可能性があります。
≪コーピングの例≫
深呼吸する、やるだけやったらもう気にしないと決める、失敗は成功のもとと考える、楽しかったことを思い出す、好きな音楽を聴く、お気に入りのカフェに行く、友達に会う、ペットと遊ぶ、ハーブティーを飲む、ジムで運動する、旅行の計画を立てる、アロマを炊くなど
よくある質問
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気分の落ち込みが続いていますが、いつ、どのタイミングで受診したらよいですか?
個人によっても差もありますが、早期の場合ほど回復が早いケースが多いです。ご自身だけでは気持ちの回復が難しい場合もありますので、2週間以上、気分の落ち込みが続き、日常生活に支障があると感じる時は一度ご相談ください。
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カウンセリングだけで治すことはできますか?
症状の程度にもよりますが、カウンセリングだけで改善する場合もあれば、薬物療法と併用することで効果が高まるケースもあります。当院では、薬物療法は必要最低限に抑えておりますが、処方の際は、患者さんに詳しい説明を行い、正しい使用法をご確認いただいた上で服薬をお願いしております。何かご不明な点やご不安なことがあれば、遠慮なく医師にご相談ください。
院長からのひと言
気持ちが落ち込んでつらい時は、少しペースダウンしてゆっくり休養し、美味しいものを食べたり、好きなことをしたりして、自分のための時間を積極的にとりましょう。
ご自身がリラックスして楽しめる時間をとることは、気持ちを立て直すきっかけになりますし、どんな行動をとると自分が元気になれるかが分かると、気持ちがコントロールしやすくなります。
当院では、患者さんのつらい気持ちを和らげて気分を回復するためのさまざまなサポートを行っています。メンタルの不調が続く時は、一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。