やる気が起きない、集中できない
こんな症状はありませんか?
「最近、何をするにも億劫でやる気が出ない……。」
「集中しようとしてもすぐに気が散ってしまう……。」
このような症状にお困りではありませんか?
やる気や集中力の低下は、疲れやストレスが原因で一時的に生じることもありますが、長期間続く場合は心や体からのSOSサインである可能性があります。放置していると症状が長引くケースもあり、背景に何らかの疾患が隠れていることもあるため、早期に不調の原因を見つけて必要な治療や対策を行い、症状の改善を目指すことが大切です。
よくある症状セルフチェック
以下のような症状に複数当てはまる場合は注意が必要です。
症状が長引き、仕事や勉強に支障をきたす場合は、放置せずにご相談ください。
- 何をするのも億劫で、行動を起こすのに時間がかかる
- 以前は楽しめた趣味に興味が持てなくなった
- 人と話すのが面倒に感じる
- 仕事や勉強を始めても、すぐに気が散ってしまう
- 頭の中に霧やモヤがかかったような感じがする
- 物忘れやケアレスミスが目立つ
- 常に疲れていて、だるい
やる気が出ない・集中できない主な原因
やる気や集中力の低下はさまざまな原因で起こることがあります。
必ずしも一つの要因とは限らず、複数の要因が複雑に絡み合い、症状が現れるケースもあります。
疲労・ストレス
仕事や勉強、日常生活における心身の疲労の蓄積により、やる気や集中力が低下する。精神的な疲れやストレスからの逃避として、無気力状態に陥ることがある。
また、近年では、スマートフォンを長時間使用することで情報の処理負担が増え、脳の疲労が蓄積する「スマホ脳疲労」も増加傾向にある。
睡眠不足
睡眠不足や睡眠の質の低下が原因で日中の眠気を生じ、頭がぼーっとしてしまい、やる気や集中力が低下する。日中のパフォーマンスが低下すると、その遅れを取り戻すために、さらに睡眠時間を削るという悪循環に陥るケースもある。
食生活の乱れ
糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの必要な栄養が不足すると、脳の働きや運動能力、精神面に悪影響を及ぼすことがある。特に、脳のエネルギー源になるブドウ糖(糖質)不足は、集中力の低下を招く要因になる。
ホルモンバランスの乱れ
女性の場合、月経周期や更年期によるホルモンの変動が、気分や集中力に影響を与え、強い倦怠感や気分の落ち込みを生じることがある。
考えられる主な疾患
やる気や集中力の低下を引き起こす病気はさまざまな種類があります。
長く続く場合、以下のような疾患の可能性が考えられます。
適応障害
人間関係や環境の変化など、何らかの特定の出来事をきっかけに、抑うつ、不安、不眠などを生じる疾患。やる気や集中力が低下して無気力な状態になる。
うつ病
精神的・身体的なストレスなどをきっかけに脳の機能バランスが崩れ、活動エネルギーが失われる疾患。やる気や集中力が低下して無気力な状態が続き、進行すると、食事や入浴、着替えなどの日常生活の基本的な行動さえも難しくなる。
睡眠障害
寝付けない、寝てもすぐに目が覚めてしまう、熟睡できないといった睡眠不足または睡眠の質の低下が続く状態。日中に強い眠気が生じ、集中力が低下することで仕事や勉強の効率が下がり、やる気も失われる。
発達障害
注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害は、生まれつき脳の機能に特徴があり、集中力が続きにくい、衝動的に行動しやすい、環境の変化に適応しにくいといった症状が見られる。
自律神経失調症
生活習慣の乱れやストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れてしまう状態。頭痛、めまい、動悸、倦怠感、不眠など、さまざまな症状を生じ、やる気や集中力の低下を生じることがある。
認知症
脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能が低下する疾患。もの忘れのほか、気分の落ち込み、やる気や集中力の喪失、無気力といった症状を生じるのが特徴。
認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)でも、集中力の低下が見られることがある。
生理前気分不快症候群(PMDD)
月経が始まる2週間前くらいから、心の状態が不安定になり、気分の落ち込み、不安、緊張、情緒不安定、怒り、イライラ、などの症状が現れて日常生活に支障をきたす状態。食行動の変化や不眠などを伴い、強い倦怠感があり、やる気や集中力が大きく減退してしまうことがある。
主な診断・治療法
やる気が出ない、集中できないという状態は、精神的な疾患のみならず、糖尿病や甲状腺機能低下症といった身体疾患が原因の場合もあります。当院では、まず問診を行い、症状の経過や生活習慣を詳しくお伺いします。その後、必要に応じて心理検査や血液検査を実施し、身体的・精神的な要因を総合的に評価した上で、以下のような治療を行います。
※検査の結果、身体的な疾患による可能性が高い場合は、適切な治療を受けられるよう、昭和大学横浜市北部病院などの提携病院をご紹介します。
生活習慣の改善
食事・運動・睡眠の状態を見直し、健康的な生活を送るための指導とアドバイスを行います。
食事
三食をできるだけ決まった時間に食べることを心がけましょう。必要なカロリーを摂取するだけでなく、脳の働きをサポートする効果のあるビタミンB群、貧血を予防する鉄分、神経伝達物質の材料になるたんぱく質などをバランス良く摂取することが大切です。
運動
散歩やストレッチなど、1日20~30分の適度な運動をすることで血流を改善しましょう。
毎日継続することで心身の状態が改善し、物事への意欲や集中力を高める効果が期待できます。
睡眠
寝る時間と起きる時間を一定にして睡眠のリズムを整えましょう。
特に、電子機器のブルーライトは、交感神経を興奮させて睡眠を妨げてしまうため、就寝2時間前からはスマートフォンの操作を控えましょう。
一般的に成人の理想的な睡眠は6~8時間とされていますが、個人差も大きいため、時間だけに囚われず、昼夜のメリハリをつけ、翌朝すっきり目覚められる質の良い睡眠を確保することが重要です。
心理療法(カウンセリング)
カウンセリング通じて、患者さんを取り巻く状況を整理し、やる気や集中力の低下につながる原因を探ります。話をすることで、患者さんの心理的なストレスを和らげることができるだけでなく、ネガティブな思考パターンを変えたり、問題に対する対応策を考えたりすることで、物事に前向きに取り組めるようになり、意欲や集中力を高める効果が期待できます。
当院では臨床心理士・公認心理師が、患者さん一人ひとりの状態に応じたカウンセリング・治療を行います。
カウンセリングの料金など詳細については、以下のページをご覧ください。
薬物療法
症状や疾患に応じて適切な薬を処方します。
うつ病または心理的なストレスによるうつ症状が原因の場合、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ剤を処方することがあります。抗うつ剤は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスを整え、気分の落ち込みを改善し、やる気や意欲の回復を助けます。
また、不眠症状が強い場合、必要に応じて睡眠薬(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系など)の処方を行います。睡眠薬は習慣性のリスクもあるため、医師の指導の下で適切に使用することが重要です。
その他、認知症の方は認知症治療薬、生理前気分不快の場合には低用量ピル(LEP)、慢性疲労症候群には漢方薬など、それぞれの症状や疾患に合わせた薬剤の処方を行います。使用する薬の種類や量は医師と相談して決定し、必要最小限の使用に抑えます。他の診療科での治療が必要な場合には、信頼できる提携医療機関をご紹介しておりますのでご安心ください。
やる気と集中力を高めるための習慣
やる気や集中力が低下している場合、まずはご自身で以下のような対処法を試してみましょう。
日頃からの心がけで心身を良い状態に保ち、高いモチベーションを維持しやすくなります。
目標の立て方を工夫する
大きい目標は達成が難しく、時間がかかることが多いため、ゴールに到達するための小さい目標を設定しておき、小さな達成感や成功体験を得られるようにすることで、意欲を維持することができます。また、25分作業して5分休憩をとるなど、集中力を高めるために仕事や勉強の進め方を工夫することも有効です。
生活リズムを整える
朝起きた時に日光を浴びると体内時計*1が整い、睡眠のリズムを改善する効果が期待できます。
太陽の光は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン*2の分泌を促進します。セロトニンは、精神の安定や安心感を保ち、脳の働きを活性化して思考力や免疫力を高める効果があります。
*1生物の体内に備わった一日周期のリズムを調整する仕組み。睡眠・覚醒、体温、血圧、自律神経の調整など、全身の機能を一定のリズムに保つ役割がある。
*2 脳内にある神経伝達物質の一つであり、ノルアドレナリン、ドパミンを制御し精神を安定させる働きがある。
ストレスを上手に管理する
一日の中で、入浴、読書、音楽鑑賞など、ご自身がリラックスできる時間を意識してとり、心や体の健康を保ちましょう。また、ヨガや散歩などの適度な運動には、寝つきを良くして、メンタルの状態を改善する効果が期待できます。日中、忙しくて時間が取れない時は、仕事や勉強の合間に短時間の瞑想や深呼吸をするだけでも、ストレスを軽減し、心を落ち着かせる効果が期待できます。
よくある質問
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意欲や集中力の低下がどのくらい続いたら受診するべきですか?
やる気が出ない、集中できないといった症状は、一時的な症状であることも多く、自然に良くなる場合もあります。ただし、症状が2週間以上続く場合には何らかの疾患の可能性もあるため、仕事や勉強などの日常生活に支障をきたす場合には、早めの受診をおすすめします。
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生活習慣の改善だけでも良くなりますか?
軽度の場合、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直すことで回復するケースもあります。
ただし、背景にうつ病などの疾患がある場合はセルフケアだけでは改善が難しいため、適切な薬物療法やカウンセリングなどが必要になります。 -
気分の問題か病気によるものか分かりませんが、受診した方がよいですか?
心身が疲れていたり、バランスが崩れていたりする時は、冷静な判断が難しい場合もあります。
不調の原因が分かることで気持ちが楽になることもありますので、心配な時はお気軽にご相談ください。「たくさんの薬を出されるのでは?」と不安になるかもしれませんが、当院は、患者さんのお考えやご希望をお伺いした上で、必要な治療方針を一緒に決めてまいりますのでご安心ください。その他、ご不明点や不安なことがある時は、遠慮せず医師またはスタッフにお尋ねください。 -
市販のサプリメントでも改善できますか?
ビタミンB群やオメガ3脂肪酸、鉄分といった栄養素は、脳の働きをサポートし、エネルギー代謝を助ける役割がありますが、あくまでも補助的なものであり、根本的な治療にはなりません。
貧血などが疑われる場合もあるため、医師の診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。
院長からのひと言
やる気や集中力の低下は、本人にとっては深刻な悩みであるものの、周囲の人から理解されにくいこともあり、解決法が見つからずに自分を責めてしまうケースもあります。
このような症状は、単なる甘えやサボりなどではなく、背後に、心身の大きなストレスや何らかの疾患が隠れているケースも少なくありません。まずは、生活習慣全般を見直してみることが大切ですが、それでも改善せず、日常生活に支障をきたす場合は、医療機関のサポートが必要です。
当院では、患者さん一人ひとりの心と体に寄り添った治療を心がけております。
一人で悩まずにお気軽にご相談ください。