食欲が落ちた、食事が美味しくない

食欲不振にお悩みではありませんか? 

「食欲がない」「食事が楽しめない」など、食欲の低下にお悩みの方は少なくありません。

疲れた時や悩み事がある時に一時的に食欲が落ちるのは自然なことですが、食事が摂れない状態が何日も続く場合には、何らかの病気や心身の不調のサインの可能性があります。

食欲の低下は、うつ病をはじめとする精神疾患に多くみられる症状であり、体重の減少や「食べ物の味が分からない」といった味覚の変化を伴うケースもあります。

毎日の食事は、生命の維持に欠かせないものであり、食事から必要な栄養素が摂取できなくなると活動のエネルギーが失われ、心身の健康が保てなくなるため、早期に原因を突き止めて適切な対策や治療を行う必要があります。放置していると、栄養失調や免疫力の低下といった深刻な状況に陥る可能性もあるため、気になる症状がある時はできるだけ早く当院にご相談ください。

食欲不振のセルフチェック

以下のような状態が続く場合、何らかの疾患が原因の可能性があります。

複数の項目に当てはまるような場合は、早期にご相談ください。

  • 食欲不振が2週間以上続いている
  • 何を食べても味がしない
  • 食事を摂るのを忘れることがある
  • 好きなものを食べても美味しいと感じない
  • 食事を摂ることに罪悪感がある
  • 食べ物の味に違和感がある
  • 同じものばかり食べている
  • 食欲不振で体重が減ってきた

食欲不振を引き起こす主な原因

食欲の低下はおもに以下のような原因で起こることがあります。

生活習慣の乱れ

不規則な食事や運動不足、昼夜逆転による睡眠不足などが続くと、自律神経のバランス*1が崩れて食欲の低下を招くことがあります。

また、過度の飲酒は、肝臓や胃に負担をかけるだけでなく、胃や腸などの消化管の粘膜を荒らして食欲不振の原因になります。喫煙も、血流が悪化して胃腸の働きが低下するほか、たばこに含まれるニコチンは、食欲を抑制する作用もあることが明らかになっています。

*1自律神経には、交感神経と副交感神経があり、バランスが崩れて交感神経が過剰に刺激されると、消化吸収を促進する副交感神経の働きが抑えられ、空腹を感じにくくなったり、味覚が鈍くなったりする。

精神的な要因

強い緊張や不安などの精神的なストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れて胃腸の働きが悪くなり、食欲が低下することがあります。

また、適応障害やうつ病、摂食障害などの精神疾患を発症すると、嬉しい・楽しいといった感情や物事への興味を喪失しやすく、食事に対する関心そのものが失われてしまうこともあります。

身体的な要因

急性から慢性の疾患まで、さまざまな疾患や身体症状によって食欲が低下することがあります。

さらに、治療のための薬剤(鎮痛剤、抗生剤、抗がん剤など)の副作用が原因で食欲不振を招くこともあります。

  • 風邪・インフルエンザなどの感染症
  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎などの消化器疾患
  • 鼻炎や副鼻腔炎による味覚・嗅覚の異常
  • 甲状腺機能低下症や糖尿病などの内分泌疾患
  • 悪性腫瘍(がん)
  • 口内炎や虫歯の痛み、歯の喪失などの口の中のトラブル
  • 夏バテ、脱水症状など

食欲の低下を招く主な精神疾患

食欲の低下を生じる精神疾患はたくさんあります。

当院では、おもに以下のような疾患の診察・治療を行っています。

適応障害

人間関係や環境の変化など、特定の出来事(ストレス)がきっかけになり、気分の落ち込み、不安感、不眠などを生じて食欲が低下する。

うつ病

精神的・身体的なストレスや強い緊張をきっかけに脳の機能バランスが崩れ、活動のエネルギーが低下する。気分の落ち込み、集中力の低下、意欲の喪失、不眠などを生じるほか、空腹感を感じにくくなって食欲が低下し、食べ物の味がしないと感じることがある。

持続性抑うつ障害

軽度~中等度の抑うつ状態が2年以上続く気分障害で、「気分変調症」とも呼ばれる。慢性的な疲労感が続き、食欲不振を伴うことが多い。

不安障害

過度な不安感や緊張が続き、気分の落ち込み、不眠などを伴う。食欲が低下し、吐き気や胃のむかつきなどを生じることもある。不安障害には以下のような種類がある。

全般性不安障害(GAD)

日常生活上の出来事に対し、漠然とした不安感(浮動性不安*2)や心配が半年以上続く。

*2自分や家族が不幸になるのではないか、大地震が起きるのではないかなど、通常は危険だと感じない状況に強い恐怖を抱くのが特徴。

社交不安障害

他人の目が過度に気になり、人前に出ることや他人との交流に強い不安を感じる。

パニック障害

場所や時間に関係なく、動悸、胸の痛み、息苦しさ、めまい、吐き気などのパニック発作を生じ、強い恐怖に襲われる。

広場恐怖症

公共交通機関・人混みなど、逃げるのが難しい場所や助けを求めにくい環境に強い恐怖や不安を生じる。

摂食障害(神経性食欲不振症、神経性過食症)

摂食障害は、食事量や食べ方などの食行動の異常があり、心身に影響を及ぼす病気の総称で、以下のような種類があります。

神経性食欲不振症(拒食症)

身体(見た目)へのこだわりが過度に強く、体重増加への不安が原因で食事を制限してしまうのが特徴。食事への罪悪感から食べることを避け、食欲そのものが失われることもある。

神経性過食症(過食症)

自分の食欲がコントロールできず、短時間に大量の食事を摂取するのが特徴。過食後に自己嫌悪に陥り、下剤を乱用したり、食べたものを吐こうとしたりするほか、食事を摂らなくなることがある。

双極性障害

気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返し現れる疾患。

うつ状態の時には気分の落ち込みや不安感が高まるため、食欲が低下することが多い。

統合失調症

初期症状として無関心や無感動などが見られ、食事への興味や意欲が薄れるケースがある。

また、幻覚や妄想により、「食べるのが怖い」「毒が入っている」と感じ、食事を避けることもある。

認知症

精神疾患ではないが、アルツハイマー型などの認知症は、初期に味覚の変化や食物への興味の喪失といった症状を生じることが多い。同じものばかり食べ続けるといった食行動の変化が認知症発見のきっかけになる場合もある。また、患者さん自身が認知機能の低下に不安を感じ、精神的なストレスを感じて食欲が低下するケースもある。

当院で行うおもな治療法

食欲の低下や味覚の変化は、単独ではなく、気分や意欲、睡眠などの変化とともに生じることが多いため、その他の心身症状も合わせて評価する必要があります。

当院では、問診で患者さんの症状や生活習慣などを詳しくお伺いした後、心理検査や血液検査などの必要な検査を行い、身体的・精神的要因を総合的に評価した上で、それぞれの患者さんに適した治療をご提案します。

なお、診察の結果、より専門的な検査・治療が必要と判断した場合には、昭和大学横浜市北部病院などの提携病院をご紹介します。

生活改善指導(食事・運動・睡眠)

規則正しい生活は、心身の健康の基本です。食事や睡眠、運動を見直し、生活のリズムを整えることで、自律神経のバランスが回復し、食欲を増進させる効果が期待できます。

バランスの良い食事

自律神経を整えるには、朝・昼・晩の3回、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。

ただし、食欲がない時は、無理せずにご自身が好きなものや美味しいと思えるものを食べてみましょう。フルーツやヨーグルト、卵や牛乳を使ったプリンなどは口当たりが良く、栄養価も高いのでおすすめです。また、一度にたくさん食べようとせず、少量ずつ回数を分けて食べてみましょう。

適度な運動

適度な運動により血流が改善し、胃腸の働きも良くなり、食欲を刺激する効果が期待できます。

ストレッチ、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、ご自身のペースで楽しみながら行える運動を1日20分程度継続して行いましょう。

起床・就寝時間を一定にする

自律神経を整えるため、起床時間と就寝時間はなるべく一定にしましょう。

夜更かしは避けて早寝早起きを心がけ、目が覚めた時はカーテンを開けて太陽の光を浴びると睡眠のリズムも整いやすくなります。

薬物療法

何らかの症状または精神疾患が原因で食欲が落ちている場合には、生活習慣の見直しと併せて、それぞれの疾患に適した薬剤の内服を行います。当院では、薬の使用は最小限に抑えておりますが、薬の服用について不安がある方は遠慮なくご相談ください。

抗うつ剤

うつ病または心理的なストレスによるうつ症状が強い場合。気分の落ち込みを改善し、意欲を高める効果が期待できる。

抗不安薬

不安や恐怖を伴う場合。強い不安感や緊張感を和らげる効果が期待できる。

気分安定薬

うつ病または双極性障害による躁状態やうつ状態がある場合。極端な気分の波を落ち着かせて緩やかにする効果が期待できる。

抗精神病薬

重度の不安症状がある場合。強い不安症状を和らげる効果が期待できる。

睡眠薬

不眠や睡眠の質の低下による体調不良を伴う場合。不眠の改善や睡眠の質を高める効果が期待できる。

心理療法(カウンセリング)

患者さんの精神的なストレスが強い場合は、カウンセラーによる心理療法(カウンセリング)が有効です。患者さんの体調やお悩みを伺い、解決方法を一緒に考えていくことで、つらい気持ちを和らげる効果が期待できます。また、食事に対するネガティブなイメージや思考パターンに気付き、正しく修正することで、気持ちが前向きになる効果も期待できます。

当院では臨床心理士・公認心理師が、患者さん一人ひとりの状態に応じたカウンセリング・治療を行います。

カウンセリングの料金など詳細については、以下のページをご覧ください。
「心理支援」ページ

食欲がない時の対処法と注意点(セルフケア)

食欲がないと感じる時は、日常生活の見直しを行うとともに、ご自身で次のような方法を試してみましょう。しばらく試しても改善しない場合は、お気軽に当院にご相談ください。

食事内容や方法を工夫する

食欲がない時は、ご飯よりもパンや麺の方が食べやすいこともあるため、主食の見直しを行いましょう。食べやすいように盛り付け方法を工夫し、スパイスや柑橘類などの香りや彩の良い食材を取り入れるのもおすすめです。また、誰かと一緒に食べたり、いつもと違う場所で食べたりすると、気分が変わって楽しく食事できる場合もあります。

ストレスを上手にコントロールする

精神的なストレスは食欲低下を招く原因になります。日頃からご自身の好きな趣味やスポーツなどでこまめにストレスを発散し、心身共にリラックスする時間を積極的に作りましょう。

また、ストレスの原因がはっきりしている場合は、その原因から距離を取ることも大切です。

たばこ・アルコールの摂取を控える

禁煙すると、食事が美味しく感じるようになり、食欲が出てくることがあります。

アルコールは、飲み過ぎに注意し、週に2日は肝臓を休める「休肝日」を設けましょう。

ただし、少量のアルコールは、胃酸の分泌を促して食欲を増進する効果も期待できます。お酒を飲む時は、食事と一緒に適量をゆっくり楽しみましょう。

就寝3時間前までに食事を済ませる

就寝時に胃の中に食べ物が残っていると、消化しきれずに胃もたれなどを起こしやすくなります。

胃腸の調子を整え、食欲を増進するためには、就寝3時間前までに食事を済ませましょう。

よくある質問

  • 食欲のない時に気を付けることはありますか?

    食欲のない時は、無理して食べようとせず、手軽に食べられるシリアルやゼリー飲料などの栄養補助食品を上手に利用しましょう。食欲がなくなると、食事から水分を摂れなくなり、脱水になりやすいため、水やお茶などの水分を積極的に摂ることを心がけましょう。
    具のたくさん入ったスープ、水分を多く含むフルーツなどは水分と栄養を一緒に取ることができるのでおすすめです。

  • 食欲不振が続いていますが、医療機関を受診する目安はありますか?

    食欲不振が2週間以上続き、体重の減少や、気分の落ち込み、倦怠感、集中力の低下など、体調や気分の変化が出てきた場合には早期にご受診ください。
    万一、身体的な病気の可能性があり、内視鏡検査などの精密検査が必要な場合も、昭和大学横浜市北部病院などの提携病院をご紹介しますので、安心してご相談ください。

院長からのひと言 

美味しいものを食べることは、人生の楽しみの一つでもあり、思ったように食事が摂れない状態はとてもつらいものです。食欲不振の原因は人それぞれですが、当院では、患者さんのお気持ちに寄り添い、原因を突き止めて一緒に解決法を考え、回復までしっかりサポートしていきます。

食欲の低下やそれに関連した症状が気になる方は、一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。

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